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セミナー

"横偏極陽子のSivers効果に対する新たな計算法の確立とその応用"
講師名 吉田信介 氏   (華南師範大学)
1月26日(木曜日) 16:30-
理学部棟A棟3階A314
高エネルギー領域での偏極散乱実験はハドロンの内部構造について多くの疑問を投げかけており、 摂動的手法に基づく理解は強い相互作用のダイナミクスについて基礎理論である量子色力学に 基づいた根本的な理解をもたらすと期待される。とりわけ横偏極陽子散乱に現れる大きな シングルスピン非対称の問題は発見から半世紀近く未解決のままであり、その起源の解明は 次世代実験計画である Electron-Ion collider 実験においても最重要課題の一つとして挙げられている。 華南師範大学のグループは近年、シングルスピン非対称の起源の一つと目される横偏極陽子の Sivers効果に対する新たな計算法を開発した。本セミナーではこの新たな計算法が単に 従来の結果を再現するにとどまらず、摂動論の高次計算等において重要な役割を果たす ことを結果を交えつつ紹介したい。
"量子開放系入門\(\sim\)量子ブラウン運動を例として"
講師名 赤松幸尚 氏   (大阪大学助教)
12月22日(木曜日) 10:15-11:15, 13:00-14:00
理学部棟A4階A421
散逸は身近な現象であり、摩擦を含んだ運動方程式などは高校生でも直感的に思いつけるであろう。しかし、その量子論的な記述となると学部の講義でもほとんど扱わない。その理由は、開放系という考え方を土台に量子論を組み立てる必要があるからであろう。近年、原子核衝突においても量子開放系の考え方が導入されるようになってきた。本セミナーでは、量子開放系の基礎から出発し、量子ブラウン運動のマスター方程式を摂動的に導出する。複数のブラウン粒子がある場合の束縛状態の記述についても解説する。
"ノックアウト反応で“見る”原子核の新しい構造"
講師名 緒方一介 氏   (九州大学教授)
12月15日(木曜日) 16:25-
理学部棟A棟3階A314
陽子と中性子(総称して核子)からなる原子核は、様々な姿で描かれる。 たとえば液滴(量子流体)としての姿、原子中の電子のようにそれぞれの核子が 振る舞う姿(独立粒子構造)、原子核中に複数の核子の塊がサブユニットのよう に浮かんでいる姿クラスター構造)などである。  多様な貌をもつ原子核を捉える強力な手法のひとつが、ノックアウト反応で ある。この反応では、高速の粒子によって原子核の構成要素が叩き出される。 いわば、量子の世界のだるま落とし反応である。直観的にも理解しやすい ノックアウト反応は、原子核の独立粒子描像の成立度を測定する手段として活用 されている。  近年、ノックアウト反応は、原子核のクラスター構造を実証する手段としても 注目を集めている。特に、質量数が大きな原子核がクラスター構造をもつか どうかはほとんどわかっておらず、その解明に向けた取り組みが実験・理論 の連携の下、強力に進められている。  本セミナーでは、「おのころプロジェクト」と名付けられたこの新しい取り 組みについて紹介し、核反応理論の観点から、これまで何が達成され、何が 課題として残されているかを概観する。また、原子核のクラスター構造の解明 を目指す研究の発展形として、原子核中の多核子相関にアプローチする研究 についても簡単に紹介したい。
"QFTにおける一般化された対称性とその応用"
講師名 谷崎佑弥 氏   (京都大学 基礎物理学研究所助教)
11月17日(木曜日) 15:00-17:30
理学部棟A棟4階A421
場の量子論(QFT)は,量子多体系の低エネルギー有効理論を記述する普遍的な枠組みを与えるが,しばしば強い相互作用のある現象を解析する必要がある.対称性はそのような非摂動的な側面を明らかにするために不可欠な役割を果たしてきたが,従来の対称性で捉えるのがむずかしい豊かなダイナミクスを理解するために,その一般化が近年明らかにされつつある.このような「対称性」は一般化対称性と呼ばれることが多いが,本講演ではその有用性を示すために,詳細なレビューを行う.まず,閉じ込め-ヒッグス(非)相補性についての従来の知識から始め,高次形式対称性,非可逆対称性などの一般化された対称性の概念応用も含めて紹介する予定である.
"自発的対称性の破れに関する最近の話題:基礎から開放系,高次対称性まで"
講師名 日高義将 氏   (高エネルギー加速器研究機構教授)
11月1日(火)-11月4日 火曜16:30-セミナー(B303)
理学部B棟2階B205
【大学院集中講義】
宇宙初期や高密度天体の内部などに現れる超高温,超高密度などの極限状態におけるハドロンの性質について講義する.このような極限状態のハドロンの性質を理解するための解析手法について基本的な事柄を紹介し,それがどのようにハドロンを記述する基礎理論である量子色力学(QCD)へ応用され,現在どのような理解に至っているか解説する.特に,中性子星や重力波の観測から重要性が増している高密度ハドロン物質について解説する.また,最近の物性物理で発展しているトポロジーを用いた量子相へのアプローチのハドロン物質への応用についても紹介する.
【セミナー】
連続対称性が自発的に破れると南部ゴールドストンモードと呼ばれるギャップを持たない励起が現れる.固体中の音波や強磁性体中のスピン波がそれに当たる.南部ゴールドストンの定理は,場の量子論において定式化され,物性系の様な非相対論系や,さらには,エネルギーや運動量が保存しない開放系にも拡張されている.また,最近では,渦糸やドメインウォールのような広がりを持った物体に対する対称性とその自発的破れを考えることで光も南部ゴールドストンモードとして理解できる事が明らかになった.本講演では,これらの自発的対称性の破れと南部ゴールドストンモードに関する近年の発展を我々の最近の研究を交えながら紹介する.
"クォークから中性子星へ (From Quarks to Neutron Stars)"
講師名 初田哲男 氏   (理化学研究所数理創造プログラム プログラムディレクター)
10月24日(月曜日) 16:30-17:30
理学部B棟3階B303
宇宙におけるバリオン物質の基本構造は、量子色力学(QCD)とそれで支配される素粒子としてのクォークとグルーオンで決まっている。近年の理論研究とスーパーコンピュータの進展で、QCDから陽子や中性子など単体のバリオンの性質を高精度で計算できるようになった。さらに、バリオン間の相互作用や原子核のQCDからの理解も発展途上にある。複数のバリオンからなる系の理解は、最終的には中性子星の構造論と関係し、天体物理学としても重要な意義をもつ。 特に、2019年に発見された太陽質量の約2倍を持つ重い中性子星、2017年と2019年LIGO/Virgo重力波検出器で発見された中性子星の合体からの重力波、2019年にNICER X線装置で観測されたパルサーの半径、など、中性子星の構造に関わる観測が急激に進んでいる。 本談話会では、QCDに基づいてバリオン単体から中性子星構造までを統一的に理解する上での、これまでの到達点と今後の課題について概観する。

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