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セミナー

"三体核力と原子核殻構造の起源"
講演者:福井 徳朗 氏  (九州大学)
2月18日(火) 15:00-16:30
理学部棟B棟2階B201
原子核の微視的記述、すなわち核子多体系の諸現象を核力の観点から理解しようという試みは、近年の核力理論の発展と相まって、原子核物理の大きな潮流の一つである。特に三体核力が核子多体系にどのように寄与しているのかが注目されている。 例えば、よく知られている原子核の殻構造について、その発現における核力の役割は十分に解明されているとは言えない。そこで我々は、三体核力が殻構造(より具体的にはスピン・軌道分離)の発達にどのように寄与するのかを理論的に調べた。三体核力に対する既約テンソル分解という新たな視点の導入により、二体核力からは決して生じない新奇なメカニズムが三体核力によって誘起され、これがスピン・軌道分離に決定的な役割を果たしていることを明らかにした。 セミナーでは、私の考える三体核力研究の展望についても述べる。
"三体核力:原子核物理の新しい物質観"
講演者:関口 仁子 氏  (東京科学大学)
2月18日(火) 13:30-14:30
理学部棟B棟2階B201
物質のもととなる原子の中心には原子核が存在し、強い力である核力が働く。核力の成り立ちを理解し、核力から出発して原子核という量子多体系を理解する、これは原子核物理学の長年の重要課題のひとつである。この課題への挑戦がここ20年で大きく進み、「三体核力」と呼ばれる核力が原子核の様々な現象を理解するためには不可欠である、という新しい視点が生まれた。三体核力とは、三つの核子が同時に作用することで引き起こされる核力の事を言う。 三体核力の存在そのものは長らく予想されていたが、実験的な検証が難しく、なかなか研究が進まなかった。我々は、三体核力の効果を探索し、その性質を調べるため、スピン偏極させた重陽子と陽子との散乱実験を理化学研究所の加速器施設で行っている。三つの核子からなるこの散乱系では、実験値と厳密理論計算との比較から、直接定量的に三体核力の大きさ、運動量依存性、スピン量子数依存性といった諸性質を引き出すことができる。これまでに断面積の高精度測定によって三体核力の明らかな証拠を見つけ、またスピン観測量は三体核力研究に有効なプローブである事を示した。 現在、核力の記述は二体核力だけではなく、三体核力を含む議論へと進み始めている。原子核の様々な性質、例えば、原子核の結合エネルギーや、中性子星などに見られる高密度の核物質などで、三体核力は欠かすことの出来ない重要な力であると指摘され、研究が進んでいる。 セミナーでは、我々が切り拓いてきた三体核力の実験的研究とその背景、また新規プロジェクト(ERATO 関口三体核力プロジェクト)を含め、今後の展望について言及したい。
"カイラル有効場理論に基づいたバリオン間相互作用によるストレンジネス核物質研究 "
講演者:神野 朝之丞 氏  (京都大学)
12月24日(火) 16:30-17:40
理学部棟A棟4階A421
高密度核物質中におけるハイペロンの存在は、核物質の状態方程式に大きな影響を及ぼす。特に、ハイペロンの核物質中における1粒子ポテンシャルは、ハイペロンが核物質中でどの密度で出現するか、あるいは全く現れないのかを議論する上で重要である。近年、高密度物質中で大きな寄与を生むと期待される三体力まで含んだ、カイラル有効場理論に基づくバリオン間相互作用の構築が進展している。本講演では、まずカイラル有効場理論におけるバリオン間相互作用の構成方法について解説し、その後、この相互作用を用いて計算したラムダ粒子およびシグマ粒子の1粒子ポテンシャルについて議論する。
"対相関と対移行反応"
講演者:萩野 浩一 氏  (京都大学)
11月21日(木) 13:15-14:25
理学部棟A棟4階A421
反応の途中で片方の原子核からもう片方の原子核へ2つの核子が移行する対移行反応は原子核の対相関に敏感であるとされている。ところが、反応メカニズムが複雑で、対移行反応の断面積から対相関の情報をいかに引き出すかということはそれほど単純ではない。このセミナーでは、複雑な対移行反応を理解する手段の一つとして、時間に依存するアプローチを議論する。これを1次元3体模型に適用し、直感的に対移行反応のプロセスを系の時間発展という観点から理解することを試みる。量子力学の応用問題として4年生にも分かるようなセミナーにしたいと思う。
"Quantum critical point from competition between the Dirac Kondo effect and chiral symmetry breaking"
講演者:服部 恒一 氏  (浙江大学)
7月29日(月) 12:55-14:25
理学部棟B棟2階B204
We discuss the QCD phase diagram in strong magnetic fields, where the chiral condensate is enhanced by the magnetic catalysis mechanism. In contrast to the conventional discussions, we include heavy-quark impurities that have been known to induce the Kondo effect. We propose a quantum critical point that arises as a consequence of the competition between the Kondo effect and the chiral symmetry breaking. Our phase diagram is obtained from a self-consistent determination of the magnitudes of the chiral condensate and the Kondo condensate, where the latter is a particle pairing composed of conducting Dirac fermions and localized impurities. We also discuss finite-temperature effects and implications for condensed matter physics including bilayer graphene.
"量子マスター方程式と対称性"
講演者:笠 真生 教授  (プリンストン大学)
7月24日(水) 14:40-16:00
理学部棟B棟3階B303
量子多体系は量子相転移やトポロジカル相などの数々の興味深い現象を示すが、その性質を一般に予言することは大変難しい。しかしながら、対称性を積極的に活用して、系が示しうる振る舞いにある種の知見を得ることができる場合がある。例えば、相転移における対称性の破れや、トポロジカル絶縁体やハルデン相などに代表される対称性に保護されたトポロジカル相の分類、そして、量子スピン系におけるLieb-Schultz-Mattis定理などがその代表例である。本講演では、量子開放多体系(環境と相互作用する系)を議論する。とくに量子マスター方程式(リンドブラッド方程式)で記述される系において、対称性に注目した我々のアプローチを紹介したい。具体的には、量子開放系に対するLieb-Schultz-Mattis定理の拡張や、量子開放系の対称性による分類を議論する予定である。

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